台湾大学に通うということは、中国語と英語からは逃げられない…という話です。
今学期知り合った先生が日本の方で、たまたまこんな話題になりました。
授業で討論をするなら、やっぱり教科書は母語で書かれた物の方がいい。英語で書かれた物だとどうしても議論や理解が甘くなる、と。
これは先生が台湾大学の人類学系で使用する文献の多くが英語であることを、暗に批判しているようでした。
確かに台湾大学の人類学系の授業では時々討論をする機会もあるのですが、結構名ばかりになっていて、発言する学生がそもそも少ないし、本当の意味でディスカッションになっていることはかなりまれです。
多分その背景にあるのは、議題となるリーディングの内容について、理解できていないという問題だと思います。
もし学問を追求するのであれば、母語で書かれたものを読む方が理解もしやすいし、外国語の読解のように時間もかからないので効率的です。もし母語に訳された書籍があるのなら、それを使うのもひとつの方法だと思います。
ここで台湾大学の教授陣の言い分を考えてみると、彼らの多くは外国の大学で修士や博士の学位を取っている方ばかりなので、英語で書かれた教科書に馴染みがあるというのと、それらの書籍の中国語訳の質が悪いことをよく挙げられているよう感じます。また、最新の研究論文などは当然英語で書かれているので、英語の文章を読むことを習慣化しておけば、後々の研究に役立つという点もあります。
ちょっと話はそれますが、一時期日本の大学でも授業の英語化を進める…という話があったと思います。私は日本語でこれだけ高度な教育ができているなら、それはそれで続けていけばいいんじゃないか、と思います。下手に英語でフィルターをかけてしまうと、研究は優れているのに英語が下手なばかりに埋もれてしまったりという弊害も…。この点は前述の日本人の教授がおっしゃっていました。多分台湾と日本ではあらゆる環境が異なるので、それぞれの出発点や目指す点も異なってくるので、どちらが良い、というわけではないと思うんです。でも日本ってやっぱりガラパゴスなところもあるけど、母語で高等教育が受けられるのって、相当な強みなんじゃないかなぁ、と思う訳です。長年の蓄積があるので大抵の学科に関してのノウハウはあるし、教育者の層も厚い。特に私の専攻である考古学を例に挙げると、台湾で考古学を学べる大学はざっと見てこの三校のみ。「人類学」にまで範囲を広げるともう少し多くの大学がありますが…。
國立台灣大學文學院人類學系
國立清華大學人文社會學院
國立暨南大學東南亞學系
それに比べて、日本で考古学を学べる大学はこのサイトによると61校もあるんですよ。
考古学/大学・短期大学(短大) 学部学科検索結果一覧
台湾の国土が九州ほどの大きさという点を踏まえても差は歴然ですよね。
考古学をやりたいなら日本の方が環境的に優れていると言わざるをえません…。1年のときにある教授が言っていたのですが、台湾には三十数名しか考古学者がいないそうです。
この規模の差は、書籍の数にも現れています。現に台湾大学の総合図書館には日本語で書かれた考古学関連の書籍が非常に多く、私をいつも助けてくれています(笑)。この点は自分が日本人で良かったとつくづく思います。
これらの参考図書に今学期は多いに助けられています。台湾大学では英語の文章を読むのはもはや必須なんですが、先に日本語のものを読んで知識を得ておくと、英語の文章を読むときに、割と入りやすいですから…(まぁ、チートとも言います)。
今学期も相変わらず、読み物の英語の比率が高すぎて、
「あれ…?私”台湾”の大学に通っているんだよな…?」
とふと考えます。中国語はどこへ行ったのだ…。
なぜこんなに英語で苦労しているんだ…。
結局のところ、大学でどう過ごすのかは本人次第です。台湾の大学で中国語と英語を伸ばしたい!という方には台湾大学は学生を鍛えてくれる環境だと思います。特に私のような外国人学生にとって外国語という壁を乗り越えて、専攻の知識まで得られるのは留学してこそのメリットだと思います。できれば来年卒業したときに「強みが中国語しかない」という事態にならないよう、専攻分野について、台湾大学の名に恥じない知識を得られるように頑張りたいと思います。

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